07.18.08:59
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05.05.23:35
5月5日
「端午の節句?」
聞き慣れない言葉に思わず発音をなぞると、目の前の蒼の髪の青年は懐かしそうな顔で笑った。
「博識なお前といえどやはり知らないか? 東の国の民俗文化なのだが……。」
そう言われてぼんやりとそんな風習があったなと思い出す。
確か……。
「ナナカマドを風呂に浮かべるんだっけ……?」
「ナナカマドじゃない、菖蒲だ……。」
「そう、それそれ。」
何故ナナカマドなんだと青年は呆れたように溜め息を零した。
全く、何故ナナカマドだと思ったのかなんて、寧ろ私が自分に聞きたい位だ。
「えっと……その国の言葉で健康を意味する言葉に似ているんだっけ?」
「知っていたか……。」
青年はつまらなそうに言うと、ふいと顔を背けた。
私や、特に弟は、雑学の類を好むので、彼は常からそれらを聞く役回りにあった。
彼は一々感嘆して話を聞いてくれるのでこちらとしては話す甲斐もあるというものだが、彼とて偶には知識をひけらかしてみたかったのだろう。
「君こそ、あの辺りの生まれではなかったろう? よく知っていたね。」
青年の出身は確かに東だったが、あんな、東の最果ての出ではなかった筈だ。
あの辺りは独自の文化が根付いていて、他者との交流を拒むきらいにあるというのに、彼こそ何故知っていたのだろう。
「父が……民俗学を専攻していたんだ。」
「へえ、それは初耳だね。」
「言っていなかったか?」
「ちっとも。」
まあ、取り立てて言う事でもないからな、と前置きしてから青年は呟いた。
「……父はあの辺りの文化に熱心で、それこそ惚れ込んでいると言っても過言ではない程だった。子供の頃は、よく父に付き合わされてそういった行事を家の中でしていたんだ。」
私は菖蒲の、植物特有の生臭さのようなものが嫌いだったのだが。
青年はそう言って困ったように笑った。
「確かに、菖蒲って独特の匂いがするものね。」
「お前も知っていたのか。」
私がそう言うと青年は少し驚いたようだった。
「あの辺りの事はリトラーさんがよくご存知でね、よくよく思い出したら小さい頃に一度だけ菖蒲湯に入った事があったよ。」
自ら体験していた事だというのに、何故ナナカマドなどと口を突いて出たのだろう。
折角、体験させてもこれでは、リトラーさんは嘆かれるだろうなと思った。
いや、どちらかと言うとそれで嘆きそうなのはイクティノスだが。
「あと、何とか餅を食べたり……。」
「柏餅だ。」
「葉巻を食べたり。」
「ちまきだ。」
「蛸を屋根の上に昇らせたりするんだよね。」
「……何かと勘違いしていないか?」
おや、と言うと、青年の呆れた溜め息が聞こえた。
どうやら、私の知識は随分と曖昧なようだ。
「そうだね……折角だから、教えて貰おうかな。」
私がそう言うと、青年は少し嬉しそうに笑った。
偶にはこうやって、人から知識を得るのも悪くないものだ。
端午の節句を絡ませようと思ったらディムロスのお父さんが民俗学者になってしまった……^▽^
ま、まあ、いいよね……!
聞き慣れない言葉に思わず発音をなぞると、目の前の蒼の髪の青年は懐かしそうな顔で笑った。
「博識なお前といえどやはり知らないか? 東の国の民俗文化なのだが……。」
そう言われてぼんやりとそんな風習があったなと思い出す。
確か……。
「ナナカマドを風呂に浮かべるんだっけ……?」
「ナナカマドじゃない、菖蒲だ……。」
「そう、それそれ。」
何故ナナカマドなんだと青年は呆れたように溜め息を零した。
全く、何故ナナカマドだと思ったのかなんて、寧ろ私が自分に聞きたい位だ。
「えっと……その国の言葉で健康を意味する言葉に似ているんだっけ?」
「知っていたか……。」
青年はつまらなそうに言うと、ふいと顔を背けた。
私や、特に弟は、雑学の類を好むので、彼は常からそれらを聞く役回りにあった。
彼は一々感嘆して話を聞いてくれるのでこちらとしては話す甲斐もあるというものだが、彼とて偶には知識をひけらかしてみたかったのだろう。
「君こそ、あの辺りの生まれではなかったろう? よく知っていたね。」
青年の出身は確かに東だったが、あんな、東の最果ての出ではなかった筈だ。
あの辺りは独自の文化が根付いていて、他者との交流を拒むきらいにあるというのに、彼こそ何故知っていたのだろう。
「父が……民俗学を専攻していたんだ。」
「へえ、それは初耳だね。」
「言っていなかったか?」
「ちっとも。」
まあ、取り立てて言う事でもないからな、と前置きしてから青年は呟いた。
「……父はあの辺りの文化に熱心で、それこそ惚れ込んでいると言っても過言ではない程だった。子供の頃は、よく父に付き合わされてそういった行事を家の中でしていたんだ。」
私は菖蒲の、植物特有の生臭さのようなものが嫌いだったのだが。
青年はそう言って困ったように笑った。
「確かに、菖蒲って独特の匂いがするものね。」
「お前も知っていたのか。」
私がそう言うと青年は少し驚いたようだった。
「あの辺りの事はリトラーさんがよくご存知でね、よくよく思い出したら小さい頃に一度だけ菖蒲湯に入った事があったよ。」
自ら体験していた事だというのに、何故ナナカマドなどと口を突いて出たのだろう。
折角、体験させてもこれでは、リトラーさんは嘆かれるだろうなと思った。
いや、どちらかと言うとそれで嘆きそうなのはイクティノスだが。
「あと、何とか餅を食べたり……。」
「柏餅だ。」
「葉巻を食べたり。」
「ちまきだ。」
「蛸を屋根の上に昇らせたりするんだよね。」
「……何かと勘違いしていないか?」
おや、と言うと、青年の呆れた溜め息が聞こえた。
どうやら、私の知識は随分と曖昧なようだ。
「そうだね……折角だから、教えて貰おうかな。」
私がそう言うと、青年は少し嬉しそうに笑った。
偶にはこうやって、人から知識を得るのも悪くないものだ。
端午の節句を絡ませようと思ったらディムロスのお父さんが民俗学者になってしまった……^▽^
ま、まあ、いいよね……!
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